サムスンの銀系全固体電池:世界の銀市場を変える革新

ハッピーインベストメントさん投稿
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サムスンが追求する次世代電池技術は、アノード(負極)に銀と炭素の複合層(Ag-C層)を用いた全固体電池(ASSB)の開発へと進化した。
この技術は2020年の論文「Nature Energy」で初めて発表され、その後も開発が進められてきた。
従来のリチウムイオン電池を大きく上回る性能を実現する構造として注目されている。
2025年末時点でサムスンSDIは商用化に向けた進展を公式に確認しており、試作機では極めて高い性能を示し、2027年に高級EV向けの量産を目指している。
■ 銀がもたらす革新の要点 
サムスンの全固体電池は、可燃性の液体電解質を酸化物や硫化物などの固体電解質に置き換え、安全性を飛躍的に高めている。
熱暴走やデンドライト形成のリスクを抑え、安定した高出力を可能にする。
特に厚さ5マイクロメートルの銀-炭素複合アノード層が、この性能向上の中心的役割を担っている。
■ 世界の実物銀市場への影響 
銀は既に構造的な供給不足にあり、需要の大半を産業用途が占める。
銀鉱山の年間生産量はおおむね8億2,000万〜8億5,000万オンスで推移しているが、2024年の総需要は11億6,000万オンスを超えている。
主因は太陽光パネル、電子機器、EV分野の急拡大である。サムスンの全固体電池では、リチウム金属の安定化とデンドライト抑制のためアノードに銀が使用される。
1セルあたり約5グラムの銀が必要とされ、100 kWh級のEV電池パックでは約1 kg(=1,000 g)の銀を要する。
トロイオンス換算で32.15 oz、つまり1台のサムスンEV全固体電池パックごとにそれだけの銀が消費される。
従来のリチウムイオン電池で使用される銀量が車両あたり25〜50 g程度にすぎなかった点と比べると、格段に多い。
銀系全固体電池への移行は、世界の銀需要を急増させる可能性を持つ。
■ 需要シナリオの試算  
世界のEV生産台数は2020年代後半に年間2,000万〜3,000万台に達すると見込まれている。
全固体電池の普及率はコスト・量産性・他社(トヨタやクアンタムスケープなど)との競合で左右される 
・普及率20%(年間約1,600万台×20%)では、銀の追加需要は約1万6,000トン(5億1,400万オンス)となり、現在の鉱山生産量の約6割に相当。
・普及率50%では約4万トンに達し、年間供給量を超える。
・普及率80%を超えると、世界の銀供給のほぼすべてがEV電池に吸収される可能性がある。
電池からのリサイクルは耐用年数20年のため短期的には期待できず、新規鉱山供給の増加も緩慢である。
銀は多くが銅・鉛・亜鉛の副産物として産出されるため、供給弾力性は低い。
太陽光発電向けだけでも年間2億オンス以上の需要があり、供給はすでに逼迫している。
■ 銀価格の上昇余地  
2025年12月中旬時点で銀スポット価格は1オンス69.51ドルを記録し、年初の30〜32ドルから141%の上昇となった。
産業需要の強さと供給不足への期待が背景にある。
2027年にサムスン電池の本格採用が始まる場合、短期的な供給衝撃により価格は1オンス100〜150ドルへ上昇する可能性がある。
高採用率と供給不足が続く場合は200ドルを超える展開も想定され、過去の急騰局面を上回る水準に達することが考えられる。
代替素材の登場や鉱山増産が進む場合は長期的に落ち着く可能性もあるが、構造的な需要拡大が持続的な高値を支える展開が見込まれる。
一方でサムスンは非銀電解質などの並行開発も進めており、導入コストの問題や他社の回避策も今後の焦点となる。
それでも技術が部分的にでも成功すれば、世界の銀市場の逼迫度は一段と高まる。
2025年10月には実物銀の急不足により銀リースレートが40%に達しており、産業需要の増加は供給問題をさらに拡大させる要因となる。
サムスンの銀系全固体電池は、EVの安全性・航続距離・充電速度を飛躍的に高める技術革新である。同時に、世界の実物銀市場に巨大な新需要を生む「銀の爆弾」として、価格を未知の高水準へ押し上げる可能性を秘めている。
投資家や産業関係者は、この商用化スケジュールを注視する必要がある。
この技術はモビリティ産業だけでなく、貴金属市場そのものの構造をも変える力を持つ。
■ 技術仕様(試作機ベース)エネルギー密度
:最大500 Wh/kg(主流リチウムイオンの約270 Wh/kgの約2倍)
航続距離:約600 マイル(約966 km)
充電時間:最短9 分で満充電(80%充電も同程度)
寿命:20 年または1,500 回超の充放電でも劣化が極めて少ないこれらの性能により、まずは「超プレミアムEV」向けに投入され、コスト低下とともに一般化が進む構想となっている。
サムスンはBMWやソリッドパワーなどと共同で検証プロジェクトを進めており、実用化に向けた試験段階に入っている。